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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(七)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 頁

青空文庫

ことに、最後の日は、両軍の接戦、惨烈を極めて、曹操自身も、乱軍の中に巻きこまれ、蜀の魏延と刃を交えているうちに、

「斜谷の城中から、裏切者が火の手をあげた」

という混乱ぶりであった。

だが、魏の陣中からあがった火の手は、裏切りがあってのことではなく、蜀の馬超が、斜谷の嶮をよじ登って、ふいに搦手から関内へ攻めこみ、後方攪乱の策に出た結果だった。

しかし城を出て戦っていた魏軍の狼狽はひと通りでない。

「すわ、総くずれだ」と、後方の騒動に前軍も混乱して、まったく統一を失い、収拾もつかぬ有様に、曹操は剣を抜いて味方の上に擬し、

「誰にもあれ、みだりに陣地を捨て、背を見せて退く者は、立ちどころに斬るぞ」と、督戦した。

しかしその姿を見て、蜀の魏延、張飛などが、

「我こそ、彼の首を」と、喚きかかるし、退こうとすれば、部下を督戦して叫んでいる自己の言を裏切るものだし、曹操もまた自縄自縛に陥ってしまうような苦戦だった。

かくと見て、曹操のそばへ、馬をとばして助けにきたのは徳だった。剛雄魏延を身にひきうけて、

「いざ、今のうちに、一方の血路をひらいて、早々落ちたまえ」と主の前に立ちふさがり、魏延の手勢、張飛の部下など、入れ代り立ち代り寄りたかって来る敵を、わき目もふらず防いでいた。