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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(七)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 頁
涙を流さぬばかりに告げて、連れてきた蛮卒百余人の手でそれへ貢ぎものを山と積ませた。
そしてなお、いうには、
「兄孟獲も、いちど銀坑山の宮殿へ帰り、多くの財宝を牛馬に積み、天子へのご献上を仰ぐため、やがて日を経てこれへ降参にまいる予定でございます」
――始終を聞き取ってから孔明ははじめて彼に親しみを見せた。そして心からその恭順を歓迎し、また贈り物を眺めては、あらゆる随喜と満足を表明した。かつ席をあらためて、酒宴をひらき、成都の美酒、四川の佳肴、下へもおかずもてなした。
昼からである。暮れれば楽人楽を奏し蜀兵は舞って興を添えた。南国の夜、ようやく更けるも、風は暖かに星みな大きく、歓喜尽きるのを忘れしめる。
その宵。いやその頃すでに――瀘水の上流をこえ、山谷森林をくぐり、蜀陣の明りを目じるしに、蛮夷の猛兵万余の影が、狡猾なる獣のごとくかさこそと、蜀陣のうしろへ忍び寄っていた。
彼らは手に手に硫黄、焔硝、獣油、枯れ柴など、物騒な物のみ持ち込んでいた。頃はよしと、孟獲は躍り上がって、
「あれが孔明の中営だ。今夜こそ遁すな」
と、合図の手を振った。
猛獣軍の影はまっしぐらに駈け出した。