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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(七)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 頁

青空文庫

孟獲も飛びこんだ。――が、こはいかに、そこには燈火の光が白日の如く晃々と耀いてはいたが、人はみな酔い伏しているだけで、一人として起って振り向く者もいない。

しかも仆れている人間は、ことごとく孟優の手下である。いやその孟優も、座の中央に打ち仆れて、苦しげに、のた打ちまわりながら、味方の蛮兵を見て、自分の口を指さしていた。

「弟っ。どうしたっ?」

孟獲は、抱き起してみたが、返事もできない孟優であった。計らんとして計られたのである。いうまでもなく、一人のこらず毒酒の毒にまわされていたのだった。

「――しまった――」

とも知らず、味方の蛮兵は、諸方から焔硝や油壺を投げて、ここを必死で火攻めにかけている。孟獲は孟優の体を抱えて、飛び出した。

「待て待て。外から火をかけると、中の味方が焼け死んでしまう。おれは孟獲だ。おれを通せ」

すると火炎の下から、蜀の大将魏延が、

「通れるものなら通れ」

と、鼓を鳴らし、槍ぶすまを向けてきた。あわてて反対なほうへ逃げてゆくと趙雲の軍が待ちかまえていて、

「孟獲。天命尽きたぞ」

と、追ってくる。

弟の体もいつか投げ捨てて、孟獲はただひとり瀘水の上流へ逃げ奔っていた。