Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
それと、何より彼の菩提心に気懸りとなるのは身の不自由な兄の半生。その後事を千浪に篤と頼んで併せて彼女に無情かりし永年の罪も一言詫びたい――と思った。
「千浪殿か」――と呼んで、新九郎は抜きかけた脇差を押しのけ、しばらく聞き耳を澄ましていたが、それっきり何の答えもないので、また重ねて、
「お呼びなされたのは千浪殿ではないか」
と低声になって縁の外をさしのぞいた。すると、
「いいえ……」
さやさやと寄って来た媚めかしい姿の影が、不意に新九郎の腕頸を握りしめた。
「…………」
彼は恟っとして身を退いた。
そこへ寄って来たのは、意外にも光子の御方だった。どうして御方がこの屋敷へ入り込んで来たのか、彼には皆目見当がつかなかった。
三
「もし……」御方は更に身を摺り寄せて、迫るように男の瞳をみつめた。
「お前様は、何で自害なされます? いいえ、その事情は大概分っておりますが、妾という者を置いて勝手に死んでよいものでございますか」
「分っている? ……」
新九郎は怪しむ如き色を濃くして反問した。けれど、一昨日彼が隠れ家を抜け出した時から、男の行動を尾行もし、また崖上の恋の隠れ家から下屋敷の様子を残らず探っていた御方には、事実およその成行きが想像されているに違いなかった。