Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Lesen Sie 火の扉 (ひのとびら) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.467 Zeichen · 257 Bildschirme
四
「えゝ、最近まで……そうです、雑誌は六月まで出ていましたから……。しかし、そのあとのことはわかりませんよ。ことにふ虜関係は……」
と、そこでちよつと言葉をにごし、
「あなたは? 失礼ですが、奥さんですか?」
彼女は、「奥さん」という言葉に思わず顔をほてらしはしたが、
「いゝえ、まだ結婚はしておりませんの」
と、キッパリ答えた。
「こゝは寒いなあ。なにしろこのとおり夏装束ですからね。どこかゆつくり話のできるところはないかなあ。あなたは、それで、この船なら浜島君の消息がわかると思つてこられたんですね?」
「えゝ、ことによつたら、ひよつこり会えやしないかと思つて……」
「そうだろうな。わしも、ひよつこり帰つて来て、だれか迎えに来てやしないかと思つてるんだから……」
四
「お国はどちらでいらつしやいますの?」
と、彼女は、待つ人といくらも年の違わぬらしいその男にたずねた。
「わし、国は富山の方ですが、勤めが広島だつたもんですから……。家内は広島の実家にずつといた関係で、もちろん生死不明です」
「まあ、広島……」
と、彼女は、まゆをよせて、相手の事もなげな調子をいぶかるように、その眼に見入つた。