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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

Lesen Sie 三国志(五) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 325.249 Zeichen · 653 Bildschirme

Aozora Bunko

逃げ落ちて行く先々を、伏兵には待たれ、矢風は氷雨と道を横ぎり、玄徳はまったく昏迷に疲れた。睫毛も汗に濡れて、陽も晦い心地がした。

「ああ。――もう息もつけぬ」

われを忘れて、彼は敢て馬からすべり降りた。五体は綿のごとく知覚もない。

「……おお」

見まわせば、つき従う者どもも、百余騎しかいなかった。彼の妻子、老少を始め、糜竺、糜芳、趙雲、簡雍そのほかの将士はみな何処で別れてしまったか、ことごとく散々になっていたのである。

「百姓たちはどうしたか。妻子従者の輩も、一人も見えぬは如何にせしぞ。たとい木石の木偶なりと、これが悲しまずにおられようか」

玄徳はそういって、涙を流し、果ては声をはなって泣いた。

――ところへ……糜芳が満身朱にまみれて、追いついてきた。身に立っている矢も抜かず、玄徳の前に膝まずいて、

「無念です。趙雲子龍までが心がわりして、曹操の軍門に降りました」

と、悲涙をたたえて訴えた。

「なに、趙雲が変心したと?」玄徳は、鸚鵡返しに叫んだが、すぐ語気をかえて、糜芳を叱った。

「ばかなことを! 趙雲とわしとは、艱難を共にして来た仲である。彼の志操は清きこと雪の如く、その血は鉄血のような武人だ。