Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(五) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 325.249 Zeichen · 653 Bildschirme
楼台は蜘蛛の巣に煤け、珠簾は破れ、欄は朽ち、帝の御衣さえ寒げではないか。
「……馬騰。忘れはおるまいな。むかし国舅の董承と汝へ降した朕の衣帯の密詔を。……あの折は、未然に事やぶれたが、このたびそちが上洛の由を聞いて、いかに朕が心待ちしていたかを察せよ」
「かならず宸襟を安め奉りますれば、何とぞ、御心つよくお待ち遊ばすように」
馬騰は泣いた眼を人に怪しまれまいと気づかいながら宮門を退出した。
邸に帰ると、ひそかに一族を呼んで、帝の内詔を伝え、
「かくとも知らず、いま曹操はこの馬騰に兵馬をあずけて、南方を伐てという。これこそ、実に天の与えた秋ではないか」
と、勤王討曹の旗挙げを密議した。
それから三日目である。
曹操の門下侍郎黄奎というものが、馬騰を訪れて、
「丞相のご内意ですが、なにぶん、南伐の出兵は、急を要します。ご発向はいつに相成ろうか。それがしも行軍参謀として参加するが」と、催促した。
「直ちに立ちます。明後日には」
馬騰は、酒を出して、黄奎をもてなした。
すると黄奎は、大いに酔って、古詩を吟じ、時事を談じたりした挙句、
「将軍はいったい、真に伐つべきものは、天下のどこにいると思うておられるか」