Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
「うぬッ!」
吠えるように叫んだ死にもの狂い。初めの勢いよりは一段鋭さを増して、縦横無尽に暴れて来た。それを綾なす新九郎は、自分でも不思議なほど楽だった。こう来るな、こう外すな、という手元が一々はっきり予察できた。生不動の家にいた頃は、彼の柔術に対って十度が十度とも勝てなかった自分に、いつこういう力がついたのだろうかと怪しまれるばかり。と――新九郎は一角の狂いを見澄まして、一足踏み込むや否や、
「えいッ――」
と気合鋭く袈裟がけに斬ッて下げた。偶然か、当然か、息と技と名刀の斬れ味がピッタリ合って、金井一角はわッと苦鳴を上げて仰向けに仆れた。しかも一太刀で絶命した。
「むウ……」
返り血を浴びたまま、新九郎は吾を忘れて呻いてしまった。いつまでもいつまでも、茫然と自分で斬った一角の死骸を不思議な昂奮につつまれながら見入っていた。
「不思議ではない、拙者はこれだけに上達したのだ、小野派の門で苦しんだ光が初めて現れたのだ……」
と思った時、彼はつつみ切れない歓喜に思わずニタリと微笑んだ。
梅茶亭の樹の間を洩れる月かげがあった。絶世の美男新九郎が髪を乱した微酔の面に、点々の返り血を染めてニヤリと笑んだ姿を見る者があったら、恐らく、美しいと見るより凄かったに違いない。