Japanische Klassiker mit Furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme
「ではどう遊ばしても、覚明様にはここ四、五日うちに京の方へお戻りでござりますかいの」
「今も申した通りじゃ。中仙道を勧進に廻った甲賀房と河内房の二人が、間もなくここへ訪ねて落ち合う約束、さすれば、嫌でも一先ずお暇申さねば相成らぬ」
「まあ何という膠もないお言葉。殿方の薄情けを真にうける女子は浅慮かも知れませぬが、妾はどうあっても、そんな近い日にお帰し申すのは嫌じゃ、覚明様、その心意でおいでなされませの……」
と媚嬌を含んだ声はまぎれもない御方ではないか。新九郎はこの如菩薩の本相を見極めんとして近づきながら、また昏沌たる謎の渦に巻き込まれてしまった。と、後ろ向きになっていた総髪の男は、微かな人の気配を耳鋭く知って、
「あッ、誰かいる――」
と窓の方を振り顧った。その顔! おおその眼眸! 線の太い顔骨の男、新九郎は一目見て、躍り立つばかり仰天した。それこそ、彼が修行に出た第一歩に、強かな目に会わせられた修験の山伏だ。亀山の城下に、
「大円鏡智流刀杖指南、聖護院印可覚明」
という大看板をかけた、武芸者鬼門の荒道場と云われた修験道場の主大円房覚明。
新九郎は飛ぶように自分の部屋へ帰って来た。