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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme

Aozora Bunko

が、酒に麻痺させている良心も、この間は、思いがけない千浪と重蔵に会って冷水三斗の苛責をうけ、今は、旧師小野忠雄と先輩梶新左衛門の眼に触れて、武士最大の恥かしめをうけた、これをしも、彼は口惜しいと思わないのだろうか、無念とは思わないのだろうか。

いやいや、今、葵ヶ岡の下を力なく行く新九郎の眸には、ほろりと落ちかけている一点の泪が見える。その泪こそ、おそらく彼の良心から、本当に滲みだした口惜し泪でなくてはならない。

彼は口惜しいのである。どうしていいか分らないほど口惜しいのだ。たった一本、ああ、たった一本、鐘巻自斎から勝ちをとることができれば、晴れて故郷にも帰れるし、家名も立つし、武士の面目を完うされるのみか、多くの者を見返してやることができる。――が、その一本の勝ちは、余りに人力の届かぬ所にあり過ぎる。

対手は一世の名人、小野忠雄すら一歩をゆずる鐘巻自斎、とても駄目だ――と思ったのと、御方の腕に巻きこまれたのとほとんど同時だった。新九郎の若い血は、当然のように、その甘い歓楽に溺れこんで、大望を忘れようとし、御方からもそう仕向けられてきたのである。