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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme

Aozora Bunko

「いいえ、できぬことはござりませぬ。世間を捨てた恋の二人に、義理もなければ絆もない筈、もしお前様が強ってと仰っしゃるなら、妾は忠房様なり兄上なり、また元の許婚とやらいう千浪というお女に逢っても、きッと立派に新九郎様の身を、申し受けて帰ります」

恋の盲目は何をするか分らない――殊に御方は公卿出の気位と、江戸で別扱いの吾儘に勝った人、まったくそんなこともやりかねないのである。新九郎は咽を締められるような強迫を感じた。

と思うと、御方はまた手を代えて、さまざまに掻き口説いたり、見るも悩ましい姿態を見せた。男が悶々と悩み惑う時、年上の女はあらん限りの力で煩悩の誘惑をつづける。

新九郎は遂に弱い男であった――彼は勝てなかった。

「ままよ、御方の言う通り、なまじ半端な武士道を立てて見たところで、一度極道へ落ちた新九郎が、どうなるものでもありゃあしない……」

ふっと気が変って見ると、一途に死ぬのが馬鹿らしくなった。いつか夜もすっかり白んで、庭樹の間から朝の陽が薄々と洩れはじめている。

「お! 姿を隠すなら今のうちだ」

新九郎は、不意に自暴らしく言って立ち上がった。