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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

Lesen Sie 剣難女難 (けんなんじょなん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 243.807 Zeichen · 482 Bildschirme

Aozora Bunko

五

五

柳端の春日重蔵の道場は、この頃、竹刀の音もしなくなって、ひっそりとしていた。

奥の一間には重蔵が足を療治して寝ていた。

「残念だ……残念だ、この足さえ満足に立てば」

と、彼の男泣きに呟やく声が、時々囈言のようにそこから洩れた。ある時は狂者のようになって。

「も一度この足を満足にして、鐘巻自斎を打ち込まねば、切腹して死ぬにも死なれぬ」

と叫び狂うことさえあった。

藩主からは時々典医を見舞によこした。正木作左衛門も余暇さえあれば来て慰めたが、弟の新九郎は、さすがに気が咎めるのか、相変らず奥に籠って人に面を合せたことがない。

その新九郎には、また新九郎の懊悩があった。或いは兄の重蔵以上の苦しみかも知れない。

この頃、千浪は目立って新九郎に元のような態度を見せなくなった。彼女は明かに恋を裏切って来ているのだ。――今日こそ、どんな手段をしても千浪に会わねばならないと彼は心を決めた。

「兄上――」

と新九郎は、閾越しに重蔵の居間へ華やかな姿を見せた。

「何じゃ」

と横臥した重蔵は、苦痛に瘠せた蒼白い顔をわずかにこっちへ向けた。――定めし肚では、この新九郎が武士らしい武士ならばと思うのであろう。