Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 350 912 caractères · 702 écrans
ギイ、と門の開く音。
駕をになう小者の足幅はゆるやかになり、そして、家人らの声は微けく、そこここに映す灯影はやわらかい。
「……着いたのかな」
武蔵は駕を出てみる。いんぎんに迎える家従らは、黙々、彼を広い客間へ通した。簾は捲かれ、四方は開け放たれ、ここも濤音のような松風のなかに在って、夏もわすれる涼しさのかわりに、燭の明滅ははなはだしい。
「亘志摩でござる」
主は、直ぐ対した。
五十がらみの人。見るからに剛健で、軽薄の風がない。典型的な三河武士だ。
「――武蔵です」
礼を執る。
「……お楽に」
志摩は、会釈して、さて――という顔をしていった。
「一昨夜、家中の若侍二人、矢矧の大橋で、斬って捨てられたそうな。……事実でおざろうか」
ぶつけである。
思慮の遑もない。また、武蔵はそれをつつむ気持も毛頭ない。
「事実でござります」
さて。――それからどう出て来るか。武蔵は、志摩の眸を、凝視した。澄み合った二人の面に、燭の明滅がしきりとはためく。
「それについて」
と、志摩は口重く、
「――お詫びせねばならぬ。武蔵どの、まず許されい」
と、少し頭を下げた。
しかし、武蔵は、その挨拶を、まだそのままには受け取れなかった。