Classiques japonais avec furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lisez 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 350 912 caractères · 702 écrans
熱湯
一
だが。だが。
伊織はそれ以来、どうも眼ざしが落着いていなかった。店にいても、往来ばかり見ているのだ。
そしてふと、心にある人の面影に似ているらしい女性でも通ると、はっと、顔のいろまで変えるのだった。時には、往来まで飛び出して、見送っていたりする――
それは八月も過ぎて、九月の初めだった。
寺子屋から帰って来た伊織は、何気なく、店さきへ立つと同時に、
「おやっ?」
と、そこへ竦んでしまった。その時も、彼の顔いろは、凡ならず変っていた。
熱湯
一
ちょうどその日は。
朝から小林太郎左衛門の店と河岸の前には、おびただしい行旅の荷物やら梱やらが、淀川から廻送され、それをまた、門司ヶ関へ行く便船に積みこむので、ひどく混雑していた。
荷物には、どれにも、
豊前細川家内某。
とか或は、
豊前小倉藩何組。
とかいう木札が見られて、そのほとんどが、細川家の家士の行李なのであった。
――ところへ今、伊織が外から戻って来て、軒先に立つと共に、あっ? といって血相を変えた、というわけは、広い大土間から軒先の床几にまで溢れて、麦湯を飲んだり、扇づかいしたりしている大勢の旅装の武士たちのなかに、佐々木小次郎の顔がちらと見えたからであった。