Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Lisez 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 350 912 caractères · 702 écrans

Aozora Bunko

四

「船の出る前、堺の小林へ使いをやり、朔日立ちと、確かめても来たのだから」

「風もないきょうの凪、そう遅れるわけはないからやがて見えよう」

「その風がないから、帆走りはよほどちがう。遅れたのは、そのせいじゃよ」

立ちくたびれて、砂に坐る者もある。白い夕星が、いつか、播磨灘の空をつつんでいた。

「ア! 見えた」

「見えたか」

「――あの帆影らしい」

「おお。なるほど」

ようやく、人々は、騒めき立って、浜の船着きのほうへ、ぞろぞろ歩いて行った。

城太郎は、その群れを、そっと走りぬけて、川尻へ駈けて行き、下の苫舟へ向って大声で告げた。

「――お通さん。ばば殿。見えたぞ。武蔵様の乗っている船の影が」

四

こよい寄る堺の太郎左衛門船。待ちかねていた武蔵の乗っている便船。それらしいのが今沖から見えて来たとの知らせに小舟の苫は、

「えっ。……見えてか」

と、揺れうごいて、

「何処に」

と、ばばも起つ。

お通もわれを忘れていう。

「――あぶない」

ばばはあわてて、舷へ縋り立とうとするお通を、抱き支えた。

そして共に、身を伸ばし、

「おお、あれかの?」

息をのんで見まもった。

宵凪の海づらを、星明りに黒い翼を張って、一艘の大きな帆船が――見まもる二人のひとみの中へ辷り込んで来るように、見ている間に、近づいてくる。