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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

六月八日

所謂芸術に理解のある男であると思う。しかし、私の発育については、かなり真面目に見て居て呉れることをうれしく、ありがたく思った。孝子さんの方は、良人にひかれて、と云う形で、やって居るらしい。

夕方、『女性』に原稿を書いて呉れと云って、成瀬慶氏来。思いがけず、河村明子さんの世話をした人で、いろいろ話が出た。実に不幸な人生を送った人。それでも父と和解して、二ヵ月後死に、その死ぬ処には、父が駄目と判って上方にゆき、恐らく、西洋洗濯をやって居る店の者位が居たのだろう。自分が、一寸想像したように、あの人自身下劣なことはなく、父が、ひどく酷薄であったのだ。可哀そうに。才のあった人だのに、実に可憐な一生を送った人と思う。「火のついた踵」の部屋、漸くわかる。

六月八日(木曜)雨

昨夜からの雨がはれない。びしょびしょと、五月雨が来たのか。

芥川氏の『点心』が出た。買いたい。

「火のついた踵」少々、調子よく行きそうなり、うれし。

六時から、日比谷の電気倶楽部で、第三木曜会あり、これから持続して会をやって行こうと云う相談。

橋本賢助と云う人は、独特だ。何処まで頭が深いか、少々疑問、ああ云う調子を包んで、不快でなくやって行くのは、少くとも男の集りだけのことはあると思う。