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にっき
日記
宮本 百合子
08 一九二二年(大正十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页
三月一日
三月二日
思いやられ、直截な、心を打つ比喩に、エキスプレッションにおどろく。
明日三宅やす子氏。
三月一日(水曜)晴 寒
「貧しき人々の群」を書いた時分、自分の芸術観は確に、十八歳の女の名誉心と何処かで一致して居た。
近頃、所謂名声なるものが種々な点で実に皮相的になり易いのを知り、仕事に対して、宗教的な熱誠がこもって来た。
若いときのように自分の心にハーッと熱中するのではなく、自分と宇宙と云うもの、宇宙の最大の帰納である人間の生活と云うものとを、しっかり相面した処にしずめ、観、その間から、実に一つの創造として世界を拵えあげて行くことが、感じられて来たのである。一面から云えば、クラシカルな、リーゾニングと、ゆたかな想像、描写の腕が如何に必要か。
我心と云うものが、実に微に入り、細を穿ち乍ら、漂膨として世界に拡って行くこと。
三月二日(木曜)
昨夕刊で、柳原※(「火+華」、第3水準1-87-62)子氏の兄が、貴族院を辞したことにつき種々考える。
有島武郎氏が五十万と云われる私財を皆すてて、借家生活を営むことに決心したと云う。感深し。
我々の生活では、どうかすると、理論一片の空論家になるか、又は低いシュードリアリスティックな現実肯定者となり易い。