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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

三月二十八日

三月二十九日

女の傾向が、ああ云う風になるのか。

Aが父と、今月は私が二つも三つも小説を書いたから、大変やり繰りに都合がよいと云うのをきく、忘られない印象をうけた。感情で云えば、淋しい、失望した、いやな心持である。先日記でよんだことも思い出す。Aは、私に書かせて、金も欲しいのか。

三月二十八日(火曜)晴

朝Aと父、三越、婦人公論来る。里見※(「弓+享」、第3水準1-84-22)氏の男より女へと云う一文をよみ、深深し。つまり女は子を産むことのほか、何をやっても男のようには出来ない、と云うのである。此は自分に何とも云われない感を起させた。まして此頃の心持に対しては、真の自分と云うものは何を、どうした境遇で、最も仕事が出来るのだろうか。

風が強く、松籟が小田原の海辺を思い起させた。

夜大掃除、うち中砂だらけになったから。

三月二十九日(水曜)晴◎

疲れを覚ゆ。野上さんに近頃の心持を書いて出す。

(ジュリアン)のつづきをよむ。

紀元三四世紀のローマ皇帝などの、人間的なライラーテをおそろしくよむ。

ギリシアとローマとではあの点だけでも違うと思う。ヘレニズムの真の澄朗さ健やかさはローマ時代には、暗い烈しい本能の吐露となる。