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にっき
日記
宮本 百合子
08 一九二二年(大正十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页
七月十日
七月十一日
七月十二日
只、服装などではない、人間味だ、その人の。
かなり体は弱り、もうそう長くも生きられない由。おしいことと思う。若し彼女に何事かあれば、その後をうけ、あれ丈しっかりした足場で、とにかく、一部の重鎮となる女の人は居ないだろう。
七月十日(月曜)不定
図書館に行く。午後二時頃まで。あまり気ものらず、借りたい本はなく、暑いので早く切りあげて来る。
「ジャン・クリストフ」一巻終、
「二つの時代」につき考える。
七月十一日(火曜)曇
歯痛――。一年ぶりの不愉快。
七月十二日(水曜)曇
晴て居るが夕刻は珍らしい涼しさだ。休みが近づいたのでAも何処やらゆっくりして居る。縁側に腰をかけ、空を見て居たら、久しぶりで散歩でもしたい心持になった。Aも気がある。早速、髪をなおし、三月ぶり位で銀座に出かけた。
盆で、仏壇を飾る種々なものを売る夜店で、一杯になって居る。妙に陰気な植物性の匂いが町に溢れて居る。古本やでかな垣魯文や涙香の二十年代のものを見つける。参考品として買う。涙香の洋装、赤い背の本を見たら、自分の子供のときを思い出した。三畳の本棚の、『新小説』や『文芸倶楽部』と混ってあんな本を一つ二つ見かけたものだ。