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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

五月二十五日

社会主義的傾向は、喋々されるよりもっと本能の願望であると思う。本能の要求だなどと云っても承知しないのは、そう云って、ぼんやりしたものにし胡魔化したものが多いからではないか。

五月二十五日(木曜)晴

近頃思う事。人間には、実に複雑を愛する心と、単純をよろこぶ心とがある。少くとも自分には、それが対立した要求となって居る。つまり紐育のアスターホテルのようなもののよさも、忘られず、又自然の、我手で我食う草を採ると云う境遇もしたわしいのだ。機械、機械、発明発明と行く心、片面の、野へ、素朴へ、必要の極限へ、と云う心。近代人の一種の煩悶である。そう云うリアクショナルの力が与える平均、どう弁ずべきものなのだろうか。

――○――

美しい天気。久しく途絶えて居たバラの花が、一つ、今にも満開になりそうに咲いた。午前八時頃の特別に爽やかな日光。

「加護」の一部分を書きなおして居ると林町から来いと云う。よろこんだ。Aが丁度六時迄大学に居るので、正門前で一緒になり帰った。留守に『読売』の人と、宮原さんがブランデスの本を持って来て呉れられたよし。多謝。――然し、宮原さんの頻繁な訪問は、自分によい感を与えない。