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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

十一月五日

うちのことなどにかまけて居るのは要するに小乗なり。もっと本のほんとうの本がなければならない。数にあらず。

十一月五日(日曜)晴

朝からA、妙にひねくれて居る。自分に云わせれば仕事をして居るから、と云うが、若し人間が、真個に自己の仕事を愛し、よろこびを感じてやって居るなら、却って、いやなことも忘れ、ひねこびた人間も快活になるのではないか。出来ない――頭が負い切れない仕事をしようとして気ばかり世間的アムビションにわずらわされるからではないか。

まつ暇をとりたしと云う。Aがいやなのなり。自分にはよくわかる。Aは人の上に立てない下品のところがあるから。

夜、宮内省の音楽をききに行きその情趣のない、妙にすました演奏ぶりに殆ど不快を覚えた。下手なくせにホーティーで、芸術を愛するものらしい心のリファインメントがちっとも感じられない。宮内省の附属になどなって真にみがかれることが少いとああなるものか。おそろしいことなり。

夜、野上さんから手紙が来、火曜に、福岡さんの処へ行くから家へよろうと云われる。嬉しく、途で気を揉むといけないから五丁目の家まで迎に行ってあげましょうと、云ってあげる。