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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

一月四日

午後から、思いがけず笹川さんが来る。眼や額の辺に、云い難い陰気なかげが出来て居て、気の毒な感を起した。関さんに近づいて行く心持も分る。じめじめした地下に居た者が、かっと皮をやくような太陽に照らされたいように、あの陽気さにすっかり気分を蒸発させてしまいたいのだろう。

馬がどんなに人間の心と交渉をもつかと云うことを話す。皆にいじめられた新兵は、馬に自分の感情を吐露すると云うこと。

新年号の種々な小説、自分には芥川氏の「俊寛」がひどく感銘した。悦びにも悲しみにも掻き乱されない心。

有島さんや野上さんの、頭から来た処はいつも自分に考えさせる。ホール・ビーイング、此がむずかしい。

夜、「渋谷家」を書きなおし始める。なおし始めたら、赤くなってまるで仕方がない。いっそ書きなおせと思って始めたのである。けれども、まだ椅子になれないうえに、夕飯がどうかしてもたれ、頭、甚だダルである。まず調子ならしのため、今夜は少しで我慢するよりあるまい。又明日から緊張した日が始る。

一月四日(水曜)晴 風強

「渋谷家」を書きなおし始めたけれども、どうもうまく行かない。やはり、元のをなおして置こうと云うことになる。