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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

一月十七日

「午市」、今日も雪のままくれる。日が照らず、家の戸障子が重い。午後から日が出る。雨だれの音。

おとりが、失った家の三万円ばかりの金を思い出し、昔は家に縫女まで置いた生活をして居たのが忘られずに居るのが憫然で又恐ろしい気がする。横領した者と親類になって居る良人に嫁した娘が気がねして東京に居ることもかくして居、封筒には名をかかず、などと云われる心持。何かになると思う。

一月十七日(火曜)曇

○「午市」

昨日いよいよAは二百円で女子学習院へ専任と定った。青山の方へ引越すことにし、行きかえりに気をつけて貰うことにする。

今のうちは此家もさほどいやに思わないが、春先から夏、全く堪らない。先のように、やたらに引越したいと思うのではないけれども、学校の近くでAが落付くからと思うと、早くよい処を見つけ、納りたい。林町とは遠くなるがよかろう。

ゴーキーの作品集を読み感深し。源氏のあとによんだので、いかに近代の生活が異って来たか、又国民性が異うかなどと云うことを思わずには居られない。もう早十七日になった。が、今年は初めから緊張し、仕事をやって居る故か、あまり心疾しくなし。