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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

五月五日

野上さんから手紙が来、自分は心を打たれることがあった。

五月五日(金曜)曇

心持落付いてよろし。朝のうち、渋谷正隆について考えなおし、筋を書き、午頃から、林町へ出かける。道で文房堂により、原稿紙をきくとないと云う。困りものなり。

野上さんの手紙で、自分は、小遣を取ると云う気が第一ではなくても、あった方もいいし位の軽い心持で筆を執ったことを思い、種々の考えに打れた。

貧乏――まあ我々の位でも――に堪えると云うこと、自分は、あまりどちらかと云えば金や物にはこだわらない方だ。けれども、とる道があると、とぼしいのに安んじては居ようとせず、無邪気だが欲を起す。なくても忘れ、ある道も忘れと云うところまで行かないのだ。あれで、自分の心にあるやわなところのいろいろを知った。

もう何も思わず、只管仕事――第一義の――に仕えて行こう。人間の日常生活では、第一義、第一義と目ざして行ってもよい加減、二次三次になる。自分のようにまして、通俗□を持ったものは。彼方の家まで自分のにすると云うような望みは、もうどうでもよいものになってしまった。いろいろな意味で、健康すぎる肉体――を思う。