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にっき
日記
宮本 百合子
08 一九二二年(大正十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页
六月十七日
六月十八日
苦しく、静脈が膨れ上ったの、体中の、のたうつのまで見え、実ははっとし「ああ首をつった」と思い、痛いような悲しさがこみ上げて来たので目を覚す。
体中に精力が欠乏し、何か濃いスープでも飲みたいような心持だ。
六月十七日(土曜)不定
何しろ梅雨なのだから、丁度自分が病気の時、いやでも何でもすむまで待って居ると云う心持で、通過るのを待つよりほかない。昨夜早く眠り、今朝も、おそくまで眠ったので、よほど疲れもなおり元気に近くなった。
「二つの時代」を書きたく思い、そろそろ材料を集めて居る。九月までに、最初の一つ位は、まとめたいと思うが――。
六月十八日(日曜)曇
二三日前から、女学の図書の中、一寸よんでよいと思うものをかり出して見て居る。西村泊翁の伝をよみ、又思想を考え、母上の見た父と云うものが、可成迄アイデアライズされて居るのを知った。あの母、周囲で父が崇高な人格に見えたのは無理もないが、哲学者ではなく、政治、教育者で、道徳は、彼の天性か、当時の世体に対する反動と、武士の伝統的思想であったものか、はっきりしない。天才ではないな。透明な我を忘れた処がない。只、あらゆる場所に、実際と云う対象を失わない家康の悪がしこい処はない事務家的冷静を保って居た人だ。