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にっき
日記
宮本 百合子
08 一九二二年(大正十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页
一月二十四日
つくづく一人一人尊いものを、少くとも通りすぎた丈では分らないものを持って居ることを感じた。男が、女に対して一人でもそう云う献身を感じるだろうか。
自分が苦労知らずであるのを痛感させられた。
一月二十四日(火曜)曇
○昼頃、小林さんが来、おかあさまが来いと云われると云う。自分も三越の菓子のことをききがてら行く。炬燵部屋で、母上と話す。
彼女は、私の芸術に対する態度、暖い胸と落付いた眼とで純に客観することがどう思っても理解出来ない。私はボルシェビキだと云われる。自分のことについていつもよかれと希って居て下さることは分り感謝なのだけれども、彼女がその心持を自認し私がそれを認めないかと、彼女の芸術家態度の定義に賛同しないこととを混同して苦しんで居られる。
ああ云う風に熱烈で、広くない正義派で、不満なのを自己の正しさのみに原因すると感じて居る方は、不幸だ。もう一歩、その理論を拡げるなり、感情でつきつめるなり、しなければ、いつも頭が天井につかえて居るだろう。
種々な点で、気の苦に思う。が、若し自分がアメリカと云う一つの区切りで彼女からある距離を持ち得なかったら、どんなことになったろうと、恐ろしく思った。