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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

七月四日

ああ云うものを書いて居た坪内先生が、あの坪内先生だとは思えない―― 私共位の年の人間には此が、只二十年と云う時間的な距離を超え、まるで父母未生以前と思われるのだ。斯様な一般の程度から、今日まで時代が進んで来たことを見考えると、人間のアダプトして行く力、進展して行く心の大きさを思わずには居られない。

七月四日(火曜)雨

朝「火のついた踵」をなおして居ると、原城氏来。ロシアの饑飢の仕事につき、すっかりまとまったと云って来られ、今更引けず、受ける。

此につき思ったことは、自分は、Aの云うなりになりすぎると云うことである。つまり、自分の信念と云うものが結婚前ほど、はっきりせず、自信を以て独立独行せず、Aの、常識(下級の)に伴って行動しすぎると云うのである。所謂損をしない世間の渡り方をしようとしすぎる。自分がちやほやされる丈はして、自分がそのために払うべき税はぬけようと云う心持。実に考えなければならないことと思う。

良人には気を許しすぎる。

自分はどう考えるか? 先ず此をはっきり考えなければいけない。人間が正反対の場合、一処に生活出来るか。どこでつながって居るのか。