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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

十月二十四日

明日一日居、あさってかえろう。予定の一週間が満ちるから。やはり家よりほかに落付く処なし。昨日より、バッジの、「埃及文学史」を少しずつ書きぬき、参考書も加えてまとめる下拵えをし始める。小説を書かないときの暇つぶしとして。勉強として、斯う云うこと、その他がうんとあるに食うためこまごましたものを書いて居る暇はない。暇をあらせると本道が危うくなる。

作に対するに一定の明かな主義と云うものが、自己の心の確かさにつれ自ら、自分にとっては生じるものであるのを、つくづく思う。外の人が作った何々主義と云うのではなく、人生に向って行く、自己の態度の体系とでも云うべきもの。

昼頃Aより電報、彼も待って居るらし。

三時頃、畑を見ると、もうずっと、樹の影やうねのかげが長く地に曳き、明暗の複雑な地面から、そそけ立ったような、きびの枯木が赫く、暖かそうに陽をうけて居る。

黄色みかかった鮮やかな緑色のひばの垣の前に、色づいてまるで大黄のように厚く黄色い桔梗の形よい茎葉。

十月二十四日(火曜)晴

今日は小春日和、暖く袷に羽織なしで居られる。明日立つのを思い祖母上と、庭や裏を廻る。やぶがきたなくなって居る、肥料小屋がくずれた、あの木を切らなくては此木が育たない。