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にっき
日記
宮本 百合子
08 一九二二年(大正十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页
十一月二十三日
よい音楽家によって弾奏される音楽をきくと、必ずそこには明瞭な音のシラブル・シャプターが感じられる。一つも無駄と云う音はない。頭から流れ出す文字がルーズになると無駄だらけになり得る。輪廓の明かさ、整然さ、而して流れ動き心に訴える真情。此が手に入ればほんものなり。深き深き対象に対する愛、それ等の動きをビジュアライズし得る絵画的素質、並、統一し、整理する頭の確かさ。至らざること遠い、と云うに遠い気がする。此等を助長させる日常のデリカシーが欠けて居るのだろう。物質的に精神的に。
昨夜、『日本及日本人』の秋期増刊から科学者の事業年表と云うようなものを写しつつ、我々の持つ知識の未だ新らしいものなのに驚く。十九世紀以後、人はやっと、生理学的な重大問題を知り始めたらしく見える。一番始め、天文学が発達したのも面白い。人間共通の、神秘的傾向の第一の発露として。
ミスアレキサンダーの処へ行き、バハイの話をする。何でも彼でも、バビ誰々が斯う云った、と云う引証して物を話すのを見、深い感に打れた。
十一月二十四日(金曜)晴
気になって居た大橋房子氏への手紙をおわり、彼のところにも書くべき通信をする。