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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

六月二十日

日比谷はこれでやって居るのだろうが、此は又大した本は持たない。どうかしてもう少し金持が、図書館の必要、改善、キューレーターの養成と云うことにつとめなければ駄目だ。古い小役人が、威張くさって、ろくでもない旧套の習慣を繰返して居たのでは。

六月二十日(火曜)晴

十時頃図書館へ行く。まだ早く、人も多勢居ないし、上野の山の木かげの小道は涼しかった。明治の小説界の変遷や、桜痴の小説、花袋が、まだどこかの本屋の小僧をして居た時分の東京のことなどをよむ。実に日本が日清戦争までにどれ程の変化を経たか、驚くべきものがある。フランスやイギリスが、五十年も百年もかかって経験したことを、十年五年の間に試み、過してしまって居る。一年が十年だ。変遷に変遷を重ね、反動に反動を重ね、而もそれが主として上流施政者間の思想に終始したので、民衆の力は、実際どれ丈くん練されたか疑問である。思想そのものとしても、明治時代の独特の粗笨さはまぬがれないと思う。又日本人独特のあわれなる創造力のなさも。日本では、アインシュタインをよんだものが学者となる。アインシュタイン自身は出ない。

六月二十一日(水曜)曇