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にっき
日記
宮本 百合子
08 一九二二年(大正十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页
八月十八日
Aが病気ででも死んで呉れたら。
苦しさにつまり、一切を滅すると云う気で死ぬ者の心持がよくわかる。
どれも、最後の決定をして呉れるものではなし。
夜、Aが、食事に来、淋しいから帰れと云う。
八月十八日(金曜)
夜、十一時の夜行で、那須に行くことに決定する。夕食後、トランクの仕度をする為に林町に行く。父上はおひろ様の送別でお目にかかれまいと思って居るとよい塩梅に帰って来られた。あまり急な思い立ちなので驚いて居られる。
金を下さる。
列車の中は相当にこんで居、傍に、六七人団隊で、東山辺へ行くらしい男達が居た。中に一人六十近い、丸い、頭をすった鼻の丸いおどけた男が居、口かずは少くしきりに子供らしく悪戯をする。眠って居る仲間に紙きれを結びつけたり、種々なことをして。
黒磯では三時半つき。まだ真暗な中を、自動車で、那珂川の手前まで来、そこから、つぎの自動車たてばまで三四丁ひどい山坂を歩かせられる。客の配分がわるいとか何とかで一時間もまち、やっと温泉につく。
せまい、坂の多い、道の真中に古びた湯気の立つ浴場のある路を、ぐうっと自動車がのぼるには驚いた。第一流と云っても、小松屋の乱雑さが驚かれた。