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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

八月二十七日

早くかえり、母上とも相談し、のびのびと生活するようにしたい。見えないたがが四方から自分の体も心もせばめつけるように感じる。

内から湧き出したいものが蠢くのに、どうにも身うごきが出来ないと云う心持。

北海道へ行くことのよしあしは、考えを要する。N氏の同情や理解はうれしく感謝するが、彼の家庭に、何かいざこざの種をまきはしないか。

他人の苦しみの原因となるのはいやだ。此方にそれほどの絶対的必要がない場合はまして。

八月二十七日(日曜)曇

部屋が別館の方で明いたからそちらへ移って呉れないかと云って来る。丁度、飯後、Aは明日どうしてもかえると云い、自分はもう少し居たいと云って居た処なので、Aは妙に目角を立て「此部屋だけの金を払って居るんだから動く必要はない。どうせ後に人が入るのだから」といきまき、恥しい心持がした。先方は、あまりはなれ、雨ふりや何かで不便なので、段々まとめ、こちらにもよい部屋に入るようにと云う心持なのだ。独りにでもなれば町中もよかろうからと見に行く。四階のはじ。湯殿まで遠くてこまりそうだが部屋のようすはまるで異う。町をぬけ、見晴しの台で、後の曖昧屋の女がキーキーふざけて居る声をきき乍ら話す。