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にっき
日記
宮本 百合子
08 一九二二年(大正十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页
十月二十一日
女工が、外出をやかましく云われるので、塀のさけ目からも、垣をこえても出ること。
ばつと云うこと。二升につき十九匁出さなければならないのを出さなかったり何かするとすぐばつになる。赤点、黒点、黒はよく、黒点かぱりかぱり。
工場は、毎年十二月初旬に一先ずすっかり解散し、又、糸をとる来年の四月頃女工をあつめ着手する。
十月二十一日(土曜)晴
九月に、一旦父上と帰京し、再、四五日で来る積りであった為、スーツケースの中に此日記をのこした。会の方の仕事の為、来られず、今日までこれが開かれなかったので、日記は一ヵ月以上ブランクとなってしまった。自分にとっては最も内容のあった一ヵ月、心の転化の多かった一ヵ月がブランクで残されたことはおしい。
今日から日を追うて、あとへ戻ることもよいが、気ぬけしたものとなる。先へ進める。
風がなく、晩秋の快よさを集めた日なり。午後三時頃、絶え間なく虫の声がし、耕地は人気なく、全部の風景は、うすい黄色をかけた茶色。朝、あざやかに色づいた柿の葉が、蒼空に実に目も覚めるばかり浮立ち、吉野桜の葉は遠くから見ると、紅葉のよう。秋の水の面、黄金色の葦、その周囲に紅葉した桜の枝と、遠く沈んだ緑色の杉叢、軽い、水彩画風の陵丘の姿が、調った遠景となる。