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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

一月五日

かきなおさなければ、活字に出来まいと云うので、Aが、書きなおして下さると云う。自分は、彼の仕事があり、それに時間が足りないのに私のをして貰うことはいやに思う。けれども、彼がよいと云うのだからよいではないかと、いやな声を出すから、云われるままにする。

久米氏の志賀直哉氏評、よき純な芸術には必ず流露感があり、それが詩であり芸術である、と云うのをよみ、実にもと思う。

一体、自分は志賀氏をそれほど偉大な芸術家だとは思われない。まれに書きひっそりと生活して居るから、一種のただありかたさに涙こぼるる、なのではないか。

さむく、手かじかみ、此もよく書けない。

仕事として春から初冬のよいことが分った。真冬は堪らない。

こおった夜に聞える近い半鐘、余韻のないカンカンカンカンと云う淋しい音。

一月五日(木曜)晴

実に寒い。臥床の中にうすら寒さで目があくと、夜具の襟から息が白く見える。冬はよいのだけれども、日本の建物がいやだ。

一旦ちぢんでしまった頭は、よほど経たないと暖く血管を充実させない。A岩波に地図を持って行く。

とりのことを思い自分のことを思うと、実に世の中の親子の関係にもさまざまないきさつと差異があるものと思わずには居られない。