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にっき
日記
宮本 百合子
08 一九二二年(大正十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页
二月二十八日
さすが春の雪で、積らず、咲きかけた沈丁花や梅の枝に少したまって、地面は雨まじりのようにとけてしまう。雀がふくれ、花の見える雪がくれの梅の小枝に止って居るのを、実に日本の風景画として見る。
基ちゃんが来る。久しぶり、おひるを一緒したので、いかにも愉快そうだが仕事は駄目。
とりは又、きのう娘がおつやの祝に雛をくれと云って来たと云ってさわいで居る。太田道灌を買い三輪まで持って行くと云う。
夕方三十分程うとうととし、夕飯後、「黄昏」を書く、やっとすます。
二月二十八日(火曜)晴
朝、「黄昏」をなおし、昼頃送り出す。
福崎氏夫人、妙に歯がはっきり見えない口の中が暗いような、先、マリア館で一緒だったような特殊な表情。
白山銀行に行き、思いがけず横山さんに会う。
夜、橋川時雄と云う豊一さんの友人来訪、北京に三年半居、内部から支那研究をして居る人、面白し、なかなか洞察が鋭い。
支那人と日本人とも大さで違うこと、
日清戦争のとき、支那人の書いた従軍記に「日本人が、馬に似た猛獣に乗ってとうっとやって来たから、とても怖しくて辛棒が出来ずに逃げ出した」とあると云う話、いかに殺気立ち、悪霊のようになってかかって行ったか。