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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

三月四日

三月五日

二十五歳が来年に迫って、始めて自分には仕事の筋目が、おぼろげに見えて来たのか。

春が来て樹に花が咲く。咲く花は冬の雪の下で育て来たのだ。その期間の見えない者。

三月四日(土曜)雨

午前中執筆、午後、和、読、夜、外国語。

ゲーテの我生活、P、三四〇、選皇帝の光景の叙述をよみ自分の心に、ゆうぜんと「黄銅時代」が浮んで来た。面白い。書きたし。実事に執することから自由になり、ああ云う大きな事件とあみ込ませて、外国に居る若い娘と恋と新生活の渇望を描く。広く、高い処から。

午後から三越に行き、福崎さんのおくりもの、青木さんのお祝、その他、福井から来られたとき、林町の子供に持って行くものを買う。

Aの校正

夜とりのところへ速達が来た。

三月五日(日曜)晴

朝早く三輪に行き、午後かえって来て、静江がわるくて、三輪に引とったから当分、どうなるか、看護のため、つき添って居なければならないから暇をくれと云う。――家に居るものが落付かず、出たり入ったりして居るのは、まことに困るし、又、あれも、なかなか思うようではないので、これをいい機会と思い、少し不自由をする覚悟で快くひまをやった。