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にっき

日記

宮本 百合子

08 一九二二年(大正十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,285 字 · 204 页

青空文庫

五月四日

心に弾力なく、今日も――と云ういやな心持がする。此では仕事も出来ない。今日はうれしい。いつもたっぷり眠らせて欲しいな。家が狭いから、一人がかたかたすると、家中がたがたになる。

五月四日(木曜)晴

朝、八畳の傍の垣の外で、男が行ったっきり出て来ない。表通りへうちの裏から出て行ったのだろうとさわいで居る。気味わるし。そんなに、あっちこっちから通りぬけが出来るのでは困るな。

『金の鳥』と云うのに巨人象のことを書いてやろうとは思ったが、なかなかむずかし。子供あいてのことは、なれないから何と書出してよいのかちっとも見当のつかない気分がするのである。

『一つの芽生』、五百部検印。

「処女地」の評に、(読売)社会問題に注目し云々と云うようなことがやかましく云われて居るが、芸術家はそうまでブルジョア、プロレタリアに煩わされなくてはいけないのだろうか。自分には、社会主義は人類の心で、人間なら持つものだが、現代の日本に於けるプロレタリア崇拝熱は、いささかも同感し得ない。小さい、狭い、激昂した波、又十年も経れば、どうにかなってしまうのではないか。

その証挙に所謂プロレタリアが、自身の力を団結させて学校なり何なり改善の組織、積極的人生改造には当り得ず、それが第一だと思って居ないではないか。