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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

あの男はどうなったかしら」

「ほう、誰かあの火のところへ、出かけた者があるのですね。それはどこの者です。そうして、まだ山を下りて来ないのですか」

新田先生は、ふかい雪をふみ分けて、あの火のそばへ上って行った者があると聞いて、たいへん興味ぶかいことに思った。

「それは、東京の人だと言っていましたがね。名前は、わしが聞いても、いや、いいんだと言って、言わないでがすよ。もっともその人はこの雪をふみ分けて、あの山を越え、向こう側の垂木村へ下りて行くのだと言っていたから、こっちへは下りて来ないことになっていたんでがすよ」

「ほう、この雪の中を、山越しに垂木村へ下りるというんですか。そいつは風がわりな人だなあ」

新田先生は、何だか、この人のことが気になって仕方がなかった。

山の上に、ちろちろと、見えかくれする怪しい火に、新田先生は、たいへん興味をおぼえたので、その翌朝、先生は、掛矢温泉の老主人がとめるのも聞かず、一人山をのぼって行った。たいへんな元気であった。

新田先生は、山のぼりについては、いささか経験があったから、ありあわせの綱を借りたり、杖をこしらえたり、また蝋燭などをもらい、一夜ぐらいはすごせるほどの食料品も用意して、出かけたのであった。