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かせいへいだん
火星兵団
海野 十三
「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页
今ラジオで、蟻田博士がたいへんなことを放送したよ。『火星兵団』というものがあるんだって」
千二は、自分でこしらえた受信機の、前に坐っていたが、そう言って、夜業に網の手入をしている父親に呼びかけた。
「なんじゃ、カセイヘイダン? カセイヘイダンというと、それは何にきく薬かのう」
「薬? いやだねえ、お父さんは。カセイヘイダンって、薬の名前じゃないよ」
「なんじゃ、薬ではないのか。じゃあ、うんうんわかった。お前が一度は食べたいと言っていた、西洋菓子のことじゃな」
「ちがうよ、お父さん。火星と言うと、あの地球の仲間の星の火星さ。兵団と言うと、日中戦争の時によく言ったじゃないか、柳川兵団だとか、徳川兵団だとか言うあの兵団、つまり兵隊さんの集っている大きな部隊のことだよ」
「ああ、そうかそうか」
「お父さん、『火星兵団』の意味がわかった?」
「文字だけは、やっとわかったけれど、それはどういうものを指していうのか、意味はさっぱりわからぬ」
千蔵は大きく首を振るのだった。
「おい千二、その『火星兵団』という薬の名前みたいなものは、一体どんなものじゃ」
父親は網のほころびを繕う手を少しも休めないで、一人息子の千二の話相手になる。