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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

七月十七日

いやね。今夜は、星の光なんか吹っとばされたように月の光が皓々です。荒っぽい空ね。大家さんへお中元をあげるのに買物に出かけたら途中で又うちへ来る女の人に出会って。そのひとは風に帽子を吹きさらわれかかって、少なからずあわてました。こんな天候が不穏なのに、山へゆくためのリュックを背負って、シュロ繩や懐中電燈リュックの外へ吊って、余り科学的でない顔つきの若者が何人も省線にのっていました。あぶない気がしてしまいました。山はこわいものですもの。リュックの外へ地図をくくりつけたような男が、シュロ繩なんかもってどこをよじのぼるかと心配ですね。山でもう何人かが死んで居ります、今夏、既に。

冨美子は八月五日ごろ上京するそうです。二十日ごろまでいるでしょう。学校からの旅行が廃止になりましたから、今度はさぞさぞよろこんで居るでしょう。多賀子と二人で遊べばいいわ。何だかまとまりのない手紙になりましたがこれで。

七月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

七月十七日

こんな紙をおめにかけます。小さい字がふつり合いですね。毛筆でペンででも大きくサラサラとかくべき模様ね。