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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

十二月二十六日(消印)

光井へ泊りにゆけば、もうちゃんと御来訪で。実に時代おくれな形です。去年は特別でしたろうけれど。

こんな紙はもう天下どこにもなし。今にきっとタイプライタの用紙にかくでしょう。普通の手紙の紙ひどくて、こまかくかけないし、ペンがひっかかるし駄目です。タイプライター用紙はいくらかましですから。封筒も、もう丸善のああいうのやそのほかありません。日本紙の封筒をつかうかもしれません。いろいろ様子がちがって参ります。

私はこの頃せきしているのよ。大して風邪をひいたとも思わないのに、せきになりました。いきなりせきになったの。あなたは? 呉々もお大切に。

羽織の紐、ほんとにいいのよ。そういうものにある美しさは格別ね。男のなりで思い出しましたが、佐野繁次郎ってイヤミの標本は洋画をやるが伊東胡蝶園で俳優花柳方面の白粉屋の主人なのね、成程と感服いたしました。では明日ね。

十二月二十六日(消印) 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書 速達)〕

十二月二十五日  第八十六信

これが今年の一番おしまいの手紙となります。きのう、ほぅとお思いになったでしょう? 現れたのが寿江子で。

二十二日にね、『文芸』