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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页

青空文庫

四

「ばかをいえ、ばかを申せ」

二度繰り返して、

「はやく行け」

「はい」

「失礼のないように、よくわしの旨を申しあげて、これへ、お連れ申して来るのじゃぞ」

「はっ」

余五郎は、いそいで、門の外へ駈け出して行った。

四

――追って行ったが、武蔵の影はもう見えなかった。

平河天神の辺りを探し、麹町の往来まで出て行ったが、やはり見当らなかった。

「しかたがない。――また折があろう」

余五郎は、すぐ諦めた。

父がいうほど、彼にはまだ、武蔵がそれほど優れた人間とは、受け取れなかった。

年齢も、自分と同じくらいな彼が、たといどれ程、才分があったとしても、知れたものだとしか思われなかった。

それに、武蔵が帰り際に、

(佐々木小次郎を相手になさるのは愚かである。小次郎は凡物ではない。小さな宿怨はお捨てになったほうがお為であろう)

などといった言葉も、頭のどこかに閊えている感じである。あたかも、わざわざ小次郎を称揚しに来たような印象を、余五郎は受けていた。

(何の!)

と、いう気持が、当然、それに対して、彼にはある。

小次郎に対しても抱くが如く、武蔵に対しても、それの軽いものを抱いているのだ。