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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页
十一
小次郎の肩に止まっている小猿が、その肩の上から後ろ向きになって、キキと、白い歯を剥いて彼女に笑いかけてくる。
「…………」
朱実は、小猿と同じ運命の者が自分であると思った。
そして心のうちで、ふと、あんな無慙なすがたになった清十郎が可哀そうに思われてきた。――武蔵というものはまた、べつな者として、彼女は、清十郎にも、小次郎にも、各※(二の字点、1-2-22)、違った愛憎をもって、男性というものを、この頃は、複雑に考えはじめて来た。
十一
――勝った。
武蔵は、心のうちで、自分へ凱歌をあげてみる。
(――吉岡清十郎に、おれは勝った。室町以来の京流の宗家、あの名門の子を、おれは倒した)
だが、彼の心は、すこしも歓んではこないのである。彼は、俯向きがちに、野を歩いていた。
ぴゅっ――と、低く掠めてゆく小禽の影が、魚のように腹を見せてゆく。やわらかい枯草と枯葉の中に、一足一足を沈め込むようにして歩いていた。
勝った後のさびしさ――というのは、賢い人たちの世俗的な感傷である。修行中の兵法者にはない言葉だ。けれど武蔵は、たまらない淋しさにつつまれて、果てなき野を独りあるいている。