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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页

青空文庫

四

「源三」と従者を顧みて、

「もはやこの辺りが、法典ヶ原ではないかの」

供侍の佐藤源三は、

「てまえも、そうかと存じますが――まだここらには、御覧の通り、青田が見えますから、開墾しておる場所は、もそっと、野の奥ではございますまいか」

と、答えた。

「――そうかの?」

もう徳願寺からかなり来ている――これより奥へすすめば、道は常陸路へかかってしまう。

陽が暮れかけた――青田には、白い鷺が、粉のようにこぼれたり舞い立ったりしている。河原のへりや、丘の陰や、ところどころに、麻も植わっている。麦も戦いでいる。

「おお、御主人様」

「なんじゃ」

「あれに沢山、農夫がかたまっておりますが」

「……ム? ……なるほど」

「訊ねてみましょうか」

「待て。何をしているのか、代る代るに地へ額ずいて、拝んでおる様子ではないか」

「ともあれ、参ってみましょう」

源三は、馬の口輪をつかみ、河原の浅瀬を瀬ぶみしながら、主人の駒をそこへ導いた。

「これ、百姓たち」

声をかけると、彼らはびっくりした眼をして、群れを崩した。

見ると、そこに一箇の掘建小屋がある。また、小屋の横には、鳥の巣箱ほどな、小さい御堂が出来ていて、彼らは、それを拝んでいたのだった。