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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页
二
二
武蔵という名は、彼の胸に、あれ以来、忘れ得ないものになって深く刻まれていた。
(ああいう人物こそ、御当家でお抱えになっておくとよいが)
と、佐渡は、密かに胸に秘めていたのであった。
だがもう一度、法典ヶ原を訪れ、親しくその人物を見極めた上で、細川家へ推挙するつもりでいたのである。
今――思い出してみると、そういう考えを抱いて帰った徳願寺の一夜から、いつか、一年の余も経っていた。
公務の忙しさにも紛れ、あれきりまた、徳願寺へ詣る折がなかったためである。
(どうしているか)
と、佐渡がふと、ひとの話から思い出していると、岩間角兵衛は、自分の邸に置いている佐々木小次郎の推薦に、佐渡の助力を期待して、なおしきりと小次郎の履歴や人物を話して、彼の賛同を求めた末、
「御前へ参られたら、どうぞひとつ、貴方からもお口添えを」
と、くれぐれも頼んで立ち去った。
「承知した」
と、佐渡は答えた。
けれど彼の胸には角兵衛から頼まれた小次郎のことよりも、やはり武蔵という名に何となく心が惹かれていた。
的場へ行ってみると、若殿の忠利は、家臣を相手に、旺に弓をひいていた。忠利の射る矢は、一筋一筋、おそろしく正確で、その矢うなりにも、気品があった。