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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页

青空文庫

四

「それはそれ、これはこれ、おれたちの兄弟分がやられた時は、おれたちの手で仕返しせねば、無法者の飯を喰って、男でござると歩いていられねえのだ」

「なるほど」

武蔵は、肯定を与えておいてからまた、いった。

「それは、おまえ達の住む世界ではそうだろう。だが、侍の世界は違う。――侍の中では、いわれのない意趣は立たぬ。逆恨みや亦恨みは、許されぬ。――侍は義を尊び、名分のために、復讐はゆるされているが、遺恨のための遺恨ばらしは、女々しい振舞いと笑うのだ。――たとえば、其方たちのような」

「何、おれたちの振舞いが、女々しいと?」

「佐々木小次郎を先に立て、侍として、名乗り来るなら分っておるが、手伝い人の騒ぎ立てを、相手に取るわけにはゆかぬ」

「侍は侍のごたく。何とでもぬかせ。おれたちは無法者だ。無法者の顔を立てにゃあならぬ」

「一ツの世間に、侍の仕方、無法者の仕方、二ツが立とうとすれば、ここばかりではない、街のいたる所に、血まみれが生じる。――これを裁くものは奉行所しかない。念仏とやら」

「なんだ」

「奉行所へ参ろう。そして是非を裁いて戴こう」

「くそでもくらえ。奉行所へ行くくれえなら、初手からこんな手間ひまはかけねえ」