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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页

青空文庫

四

「でも、影法師と二人づれなどとは、人を小馬鹿にしたおことばではないか」

「しからば――」

武蔵は、小次郎以上、きっと真面目な態を示して、

「親鸞聖人の申されたことばとやらに――念仏行者は常に二人づれなり、弥陀と二人づれなり。とあったように覚えておるが、あれも冗談ごとでしょうか」

「…………」

「何様、ただ、形のうえより観ずれば、吉岡衆はさだめし大勢でござろうし、この武蔵は、見らるる如くただの一名。勝負にはならぬと小次郎殿も、拙者を案じて賜わるのであろうが、乞う、お案じくださるな」

武蔵の信念は、言葉のひびきからも脈を搏って、

「彼が十人の多勢を擁するゆえ、われも十人の勢をもって当ろうとすれば、彼は二十人の備えを立てて打ってくるに違いない。彼二十人なれば、われも二十人の勢をもって当らんとすれば、彼はまた三十名、四十名を呼号して集まるでしょう。さすれば、世間を騒がすことも甚だしく、多くの負傷なども出して、治世の掟を紊すばかりか、それが剣の道に益するところはいずれもない。百害あって一益なしです」

「なるほど、だが武蔵どの、みすみす負けと分っている戦をするのは、兵法にないと思うが」