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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页
五
「ここからは、はや半里余り、ゆるゆる歩いて行かれても、時刻の余裕はまだ十分」
「では、後刻また」
武蔵がふいに、横道へ曲りかけると、
「ヤ、道がちがう。武蔵どの、そう行っては方角が違う」
あわてて小次郎は注意した。
五
武蔵はうなずいた。小次郎の注意に対して、素直にうなずいた。
しかし見ていると、曲った道をそのままなお歩いてゆく様子なので、小次郎はもいちど、
「道が違いますぞ」
声をかけると、
「はあ」
と、分っているような返辞。
並木のすぐ後ろで、窪地の傾斜に沿い、だんだん畑がある、茅ぶき屋根が見える。その低い方へ武蔵は降りてゆくのである。雑木の隙間から後ろ姿が見える。――月を仰いでぽつねんと立っている姿がわかる。
小次郎は、独りで苦笑を頬に流しながら、
「……なんだ、小用か」
呟いて、彼も月を仰ぐ。
「だいぶ西へ傾いて来たなあ。……この月がかくれる頃には、何人かの人命も消えてゆくのだ」
彼の好奇心は頻りといろいろな予想を描く。
武蔵がなぶり殺しにされることは、結局においては確実だが、あの男のことである、仆れるまでに何人の敵を斬るか。
「そこが見ものだ」
と、彼は思う。