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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页

青空文庫

四

と、城太郎がいきなり訊ねだした。

「今ネ。あそこの茶屋に休んでいた坊さんだの旅の者が、お通さんを指して、そういったんだよ。――牛に乗ったふげんみたいじゃのう……ってね」

「普賢菩薩のことでしょう」

「普賢菩薩のことか。じゃあおいらは、文殊様だ。普賢菩薩と文殊菩薩は、どこでも並んでいるからね」

「食いしん坊の文殊様ですか」

「泣き虫の普賢様となら、ちょうど似合うだろう」

「また!」

とお通が、嫌がって顔を紅らめると、

「文殊と普賢菩薩は、どうしてあんなに並んでるんだろう。男と女でもないくせに」

と、奇問を発する。

お寺で育ったお通であるから、それについてなら、説明はできるが、城太郎の執拗な反復を惧れて、ただ手短に、

「文殊は知慧を現し、普賢は行願を現している仏様です」

といった時、いつのまにか何処からか、蠅のように牛の尻尾へついて来た一人の男が、

「おいっ」

と、尖った声で呼び止めた。

さっき福島で、城太郎がちらと見かけたという、本位田又八であった。

四

そこらで待ちうけていたものに違いない。

――卑劣な男。

お通は彼の顔を見るや、すぐこみあげてくる侮蔑の念を、どうしようもない。