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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页
とも光悦はいってくれるのであった。
武蔵は、飽きるどころではなかった。彼の書斎をながめても、そこには和漢の書籍から、鎌倉期の絵巻だの、舶載の古法帖だの、そのうちの一つを繰りひろげても、思わず一日は暮れてしまうものが沢山ある。
わけても、武蔵が心を引かれたものの一つに、宋の梁楷の描いたという「栗の図」が床の間にあった。
たて二尺、横二尺四、五寸くらい、横幅で紙質も分らないほど古びた懸物であったが、それを見ていると、武蔵はふしぎに半日でも飽くということを覚えない。
「御主人のお描きになるような絵は、とても素人には及びもないという気がしますが、これを見ていると、これくらいなものなら素人の私にも描けるというような気がしますな」
武蔵が、ある時いうと、
「それは、あべこべでしょう」
と光悦が答えて、
「わたしの絵くらいな程度までは、誰にでも行き得る境地といってもかまいませんが、この辺になると、道高く、山深く、非凡過ぎて、ただ学べば行けるという境地ではありません」
といった。
「ははあ、そうでしょうか」
――そういうものかと、武蔵はこれから折あるごとにこの絵を眺めていたのであったが、光悦にいわれて見てから、なるほど、それは一見単純な墨一色の粗画に過ぎないが、その中に持っている「単純なる複雑」